Cobalt 2007年 04月号の第二特集「歓迎来臨!中華的小説世界」に連動して、中華風ファンタジーの紹介など。
中華風ファンタジーとひとっからげに言ってもいろいろありますが、だいたいこんな傾向があります。
- 名前や地名が漢字で、音読あるいは中国風(普通話・広東語)に読む
- 神仙や妖魔が非常に近しいか、逆にまったく登場しない
- 官僚制度や制度化された後宮が存在する
史実の中国を舞台とした時代小説的なものも便宜的に中華風ファンタジーに入れます。神仙を名乗る人物や妖術や不可思議が出てくることがありますからね。
ぶっちゃけ「名前や地名をカタカナにしたら西洋風ファンタジーになるんじゃ?」ってものもあります。まあ西洋風ファンタジーというのも「日本人が考えた西洋風」だったりしますので分類は難しいところ。
コバルト文庫以外の少女小説文庫レーベルを含めた主要な中華風ファンタジーシリーズの紹介を順不同に。
小野不由美「十二国記」(X文庫ホワイトハート)
いわずと知れた中華風ファンタジーの傑作。神仙や妖魔が存在し、12の国がそれぞれ麒麟が天意にしたがって選んだ王によって支配される世界を舞台に、王とは何か、麒麟とは何か、国を治めるとはどういうことかを主題としたシリーズです。
今野緒雪「夢の宮」(コバルト文庫)
「マリア様がみてる」シリーズの今野緒雪が書く中華風ファンタジー。中華風架空世界にある鸞(ロアン)という名の国の王宮の奥にある小さな離宮「夢の宮」を舞台とする恋愛オムニバス小説。各話は主人公が異なり独立した話になっています。「薔薇」がタイトルになっているものはシリーズ内シリーズとして続いています。
雪乃紗衣「彩雲国物語」(ビーンズ文庫)
今話題の中華風ファンタジー。中華風架空世界にある神仙による建国神話を持つ彩雲国を舞台に、初の女性官僚を目指す主人公を中心とした物語。妖魔はあまり出てきませんが、神仙がそこかしこで暗躍している様子です。
毛利志生子「風の王国」(コバルト文庫)
唐代初期、皇帝の命令で吐蕃に嫁ぐことになった主人公が見ず知らずの西域での生活をトラブルに巻き込まれながらおくる物語。文成公主降嫁の史実を基にしています。下手に歴史を知ると将来が不安になれます。中華というより西域だけど、ここに。
山本瑶「桃源の薬」(コバルト文庫)
今までは人間中心の中華風物語でしたが、これは神仙と妖魔中心。中華風架空世界を舞台に、家出してきた何事も前向きで情が深い少女と、何事も後ろ向きで引きこもりがちで心配性でいわくありげな少年方士が、何かとトラブルに巻き込まれる物語です。
岡篠名桜「月色光珠」(コバルト文庫)
唐代中期を舞台に、没落した実家の建て直しにと、科挙を受験する弟とともに長安に戻ってきた主人公が、隠密と知り合うことで政治の裏の世界に巻き込まれていく物語。
森崎朝香「花嫁シリーズ」(X文庫ホワイトハート)
「××の花嫁」と題する連作もの。諸国乱立する中華風架空世界を舞台に、政略結婚で国の王の花嫁となった女性のシリアスラブストーリー。それぞれ主人公は違いますが時代は似通っており微妙に係わり合いがあります。
菅沼理恵「星宿姫伝」(ビーンズ文庫)
中華風というより少し日本風が含まれた無国籍架空世界が舞台です。最愛の父を失った直後に「斎宮」として神杖国の守護者とされた少女が、神杖国の建国にまつわる呪いをときほぐす。4人の「斎宮の騎士」によって逆ハーレム形成してるはずなんですが、みんなへたれてるというか他のキャラクターのほうが強いというか。
槇ありさ「瑠璃の風に花は流れる」(ビーンズ文庫)
隣国に母国を滅ぼされ、そして隣国の王子の許婚として隣国王宮に連行された王女を主人公に、国の再興を企む者や他国とのかかわりが出てきます。架空世界が舞台で、これも少し中華風でない雰囲気があります。