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2008年の少女小説文庫雑感

2008年は一迅社文庫アイリスの創刊、季刊だったもえぎ文庫ピュアリーの隔月刊化、『伯爵と妖精』のアニメ化など明るいニュースもありましたが、一方で現在の少女小説に大きな影響を与えた作家氷室冴子さんの訃報もありました。

一迅社文庫アイリスの創刊

『このライトノベルがすごい!2008年版』で触れられていた、一迅社の少女小説レーベル参入は、2008年7月に「一迅社文庫アイリス」という名称で創刊となりました。創刊時に「ジャンル:百合」とある作品が二つあることで話題を呼びました。

もえぎ文庫ピュアリーの隔月刊化

ボーイズラブ文庫レーベル「もえぎ文庫」の下部レーベルとして創刊された「もえぎ文庫ピュアリー」が、3ヶ月ごとの刊行から隔月刊になりました。そのこと自体は喜ばしい事ですが、乙女系が全くない月があることもあり、今後が心配なレーベルでもあります。

『伯爵と妖精』アニメ化

イギリスヴィクトリア朝時代を舞台に、「妖精国伯爵」を名乗る人物と彼に雇われた妖精博士のラブストーリー『伯爵と妖精』(コバルト文庫)がアニメ化しました。独立UHF系の深夜放送です。また、コミックも連載中で、ゲーム化も計画されています。

氷室冴子さんの訃報

コバルト文庫を中心に1980年代から1990年代に活躍した少女小説の代表的な作家、氷室冴子さんが2008年6月に亡くなりました。1990年代後半以降は目立った執筆活動がなかったとはいえ、多くの作家に多大な影響を与えました。

雑誌コバルトの判型変更と値上げ

隔月刊発行の雑誌コバルトが発売日変更し、判型が一回り小さくなっただけでなく、値上げも行われました。世間では紙代の上昇と雑誌の売り上げ減少、広告収入の減少と、雑誌というメディアに逆風が吹いているからなんでしょうけど。

各レーベルの雑感

stella_nfのルルル文庫新刊出版数とstella_nfのビーンズ文庫新刊出版数とstella_nfのビーズログ文庫新刊出版数とstella_nfのコバルト文庫新刊出版数

コバルト文庫、ビーンズ文庫、ビーズログ文庫、ルルル文庫の2007年3月から2008年12月までの新刊出版数をグラフにしてみました。

少女向けライトノベル文庫レーベルから出ている多くの作品は題名にナンバリングがなされていないことが多く、どの順番に読めばいいのかわからないことが往々にしてあります。私の記憶では、ウィングス文庫から出ているものと、津守時生の著作、炎の蜃気楼、英国妖異譚、流血女神伝の各篇ぐらいでしょうか。

多くは『シリーズタイトル 各巻タイトル』(あるいは『各巻タイトル シリーズタイトル』)になっています。しかし、シリーズタイトルが書籍タイトルに入っていないことがままあります。

2007年に最新刊が出たシリーズタイトルが書籍タイトルに入っていないものを紹介します。

2006年、2007年には少女小説の新規レーベルがいろいろはじまりました。

2006年に創刊がアナウンスされていた小学館「ルルル文庫」だけではなく、ボーイズラブレーベル「もえぎ文庫」のスピンアウト「もえぎ文庫ピュアリー」、やはりボーイズラブレーベルを持っているフロンティアワークスから「フィリア文庫」、年末にはコーエーから「GAMECITY文庫」が創刊しました。2006年にはエンターブレインから「B's-LOG文庫」がはじまっています。

ルルル文庫」は創刊アナウンスから1年かかったわりにB's-LOG文庫とどっこいどっこいな位置を占めてる感じがします。とはいっても今までなら訳されなかっただろう海外小説の翻訳を手がけてくれるのが面白い。

もえぎ文庫ピュアリー」は生々しくないボーイズラブの方が主体になっている気配があります。乙女系が「キスとDO-JIN!」シリーズだけではなく「モテMAX!」も始まり、とりあえず完全ボーイズラブ化だけは避けられそうな気配。

フィリア文庫」は、現状「セイント・ビースト」ノベライズのみの展開。もえぎ文庫ピュアリー以上にスピンアウト用レーベルのようです。

コーエーの「GAMECITY文庫」は、以前から単行本で展開していた自社の女性向けゲームのノベライズを昨今の出版事情を鑑みて文庫形態で出す模様。来年には中国語圏小説の翻訳を発売しますし、新人原稿募集を開始しているので、今後オリジナル展開があるといいんですが。

B's-LOG文庫」は創刊1年たちましたが、まだレーベルをぐいぐい引っ張っていけるヒットは出ていない印象。多くは他社で書いていた作家を起用しています。新人が今年デビューですのでこれからどう育っていくかでしょうか。

来年は一迅社がライトノベルに参入するという情報があり、そのような展開を行うか興味深いです。

最近、19世紀の大英帝国を舞台とした少女小説が増えています。ヴィクトリア朝とその前後の「日の没せざる帝国」が最も繁栄していた時代です。

世界中の富を基盤とした、華やかなる社交界。成り上がりのブルジョワと、旧来からの貴族階級との静かな軋轢。その一方で起きる労働者や植民地の搾取……が少女小説に描かれることは少ないですけどね。

特にこの時代の貴族趣味は、後々も「貴族的なもの」をあらわす記号の基盤になっています。メイドや執事、華やかなパーティーに美しいドレス、観劇、乗馬……etc.

また、この時代はまだ身分格差が大きく、しかし流動は起きているため、労働者・中流階級・上流階級の身分差のある恋愛というのが大変な障害になりがちでした。

説明はこのくらいにして、大英帝国を舞台とした少女小説(一部翻訳・少年レーベルあり)を紹介します。

Cobalt 2007年 04月号の第二特集「歓迎来臨!中華的小説世界」に連動して、中華風ファンタジーの紹介など。

中華風ファンタジーとひとっからげに言ってもいろいろありますが、だいたいこんな傾向があります。

  • 名前や地名が漢字で、音読あるいは中国風(普通話・広東語)に読む
  • 神仙や妖魔が非常に近しいか、逆にまったく登場しない
  • 官僚制度や制度化された後宮が存在する

史実の中国を舞台とした時代小説的なものも便宜的に中華風ファンタジーに入れます。神仙を名乗る人物や妖術や不可思議が出てくることがありますからね。

ぶっちゃけ「名前や地名をカタカナにしたら西洋風ファンタジーになるんじゃ?」ってものもあります。まあ西洋風ファンタジーというのも「日本人が考えた西洋風」だったりしますので分類は難しいところ。

コバルト文庫以外の少女小説文庫レーベルを含めた主要な中華風ファンタジーシリーズの紹介を順不同に。

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