なんだか去年がなかなかまとまりません。まずは2009年に刊行された本のうちお気に入りのものを紹介します。
獣の奏者(探求編・完結編)
獣の奏者は2巻までで完結していたのですが、読んだ時は「これで完結? 唐突に終わっていて余韻が欲しいなあ」という感想を持ったものです。3巻(探求編)、4巻(完結編)では、「売れたから出版社が無理矢理続けさせた」感が全くなく、「そのことには全く気がつかなかったよ!」の連発。最後も納得のいくものでした。
天地明察
読んだのは今年に入ってからですが、獣の奏者に匹敵する傑作です。日本独自の暦法をはじめて作った渋川春海の伝記小説。前と後に比べてマイナーな四代将軍家綱時代に興味を持った。武断政治から文治政治への転換期だったんだなあ。算術のライバル関孝和が本人登場しないのに存在感抜群だったり、主人公を必死に碁の世界にとどまらせようとする本因坊道策の勝負碁への執着ぶりと、回りの人物も魅力的です。
花宵道中
2007刊行単行本の文庫化。文庫化は2009年なので入れとく。江戸時代後期の吉原を舞台に、女郎屋「山田屋」の遊女とそこに関わる男たちの連作短編集。遊女の恋と意地が美しく官能的。意外なところで繋がっていて、「ああ、この人の行動はそういうことなのね」と驚くこと多し。文庫版書き下ろし短編は、女郎屋の裏側が見えてよかったなあ。
紫色のクオリア
ライトノベルで量子論だのなんだのという評価を聞いてたのでどういうことかと思ったら、なるほどそういうことか。センスオブワンダーに圧倒されます。導入としての短編と、世界に吹っ飛ばされる中編のセット。
現代萌衛星図鑑
小説が続いたので最後にノンフィクション。凡百の「萌えキャラ出して科学解説させればいいんじゃね?」というものとは全く違います。衛星を萌え擬人化することで宇宙開発行政のぐだぐだそのものではなく、ぐだぐだの犠牲になった衛星たちの悲劇を教えてくれます。満身創痍で地球への帰路を取る「はやぶさ」や、なごみ系の「おりひめ・ひこぼし」も感動的です。
以下蛇足
次点は以下の作品
「これよかったんだけど刊行は2008年以前なんだよね」をいくつか。
阪急電車
阪急今津線のある電車に乗り合わせた人々をリレーで繋ぐ短編集。往路と復路があって、復路では往路での登場人物のその後も描かれます。2008年刊行。
紫の砂漠
文庫化すら2000年なジェンダーファンタジー。「真実の恋」や「運命の親」など少女小説好きをワクテカさせるキーワードがちりばめられています。『詩人の夢』は続編。
黄金の王 白銀の王
以前に『黄金の王 白銀の王』はファンタジー政治劇の傑作だという記事を書きました。2007年刊行。
カラオケ秘史
カラオケがどのように生まれ、普及し、変遷していったかをいろいろな視点で見たルポルタージュ。読み物としても面白いです。2008年刊行。
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