渡瀬草一郎の『空ノ鐘の響く惑星で』が先日発売された12巻で無事完結しました。12巻を読み終わってまず思ったのは「パンプキンエンド」。まさかここまで主役を食うとは思ってませんでした。
異世界ファンタジーSF風味。信仰の中心になっている神殿にある「御柱」から出てきた少女と主人公が出会い、彼女を追って現れた人達によって、よりによって国王と皇太子が惨殺。内乱になるわ隣国から侵攻されるわ影で糸ひく連中はいるわで世界の秘密と危機に巻き込まれていくという筋。
主人公のフェリオは、主人公らしく真面目で素直で聞き分けがよくて戦闘に強くて朴念仁なのですが、いい子すぎて影が薄くなってしまったのが難点。影の薄さはアルスラーン級かな(『アルスラーン戦記』の完結はいつだ)。最終的に無難すぎる形になってしまいました。
「来訪者」のリセリナ。正ヒロインと思ったらダブルヒロインの片割れ。もう一人のヒロイン・ウルクに比べて見せ場が少なかったような。ウルクは1巻登場時にはここまで策を弄するタイプだとは思いませんでした。
リセリナを追ってきたグループのうち、一番キャラが薄かったのが、一番悲劇的だったバニッシュだというのはなんともいいがたい。キャラが一番立ってなかったからかな。それとも名前(vanish:消失)が悪かったのか。
主人公と敵対した人達、兄レジークやカシナートなどは、登場時点では相容れない敵であったのに、事情が説明されていくにつれどんどん矮小化してくのがちょっと悲しかった。怪物は正体不明でなければならない
んだなあ。そのへんについて銅大さんが彼らは何よりもまず、自分自身の物語の主人公なのだ
と分析しています。おかげで一部割を食ったキャラがいるとはいえ、登場人物の多さに比べて「どんなキャラだったかわからない」ということはありませんでした。
それにしても「完結」、少なくともフェリオとリセリナとウルクの物語を完結させたことはすばらしい。内乱編がちとぐだぐだだったり、ジラーハ行やラトロア編が駆け足になってしまっていても、完結すると評価が一割増しになるんだよね。少し地味だけど手堅い大河ファンタジーに出会えて感謝しています。
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